オーラルフレイル
MEDICAL
老化はお口からはじまります
老化というと足腰が弱ってくイメージがありますが、
実際は「口」から老いていくということを
ご存知の方は
少ないのではないでしょうか。
歯や口の働きは、老化現象と深く関係していることが
明らかになってきました。
このようなささいなお口のトラブルが
長く続くようであれば、
歯や口の働きが少しずつ衰えている
可能性があります。
健康と要介護の間には、筋力や心身の活力が低下する「フレイル」と呼ばれる中間的な段階があるとされ、その手前にある「前フレイル期」にオーラルフレイルの症状は現れます。
フレイルから要介護へ症状が進むことなく健やかで自立した暮らしを長く保つためには、オーラルフレイルの段階で気づき、予防や改善に努力することが重要であるということがわかってきました。
オーラルフレイルや予防を積極的に取り組んでいる歯科医院として、院長の加古祐輔はセミナーに招かれ講師を行ったり、歯科雑誌に寄稿しております。
多くの方の健康のために、様々な活動を通して新しい知識や技術を取り入れ、患者さまへ還元できるよう努めています。
歯や口にはそれぞれの「働き」を本来多く持っています。専門的には「口腔機能(こうくうきのう)」と呼ばれています。
その口腔機能を大きく分けると「食べること」の噛む、すりつぶす、飲み込む、味わうこと、「話すこと」の発音、会話、歌うことなどで、笑う、怒るなどの「感情表現」や「呼吸」なども含みます。
加齢により噛む力が低下すると、食事がのどに詰まりやすくなります。また、飲み込む力が衰えるとむせやすくなります。口の中を清潔に保ち、歯の表面を強くする働きのある唾液の分泌が少なるなることで虫歯、歯周病の進行や口臭の原因になります。
このようなお口の機能が低下することで、図のような悪循環に陥りやすいと考えられています。
オーラルフレイルはこうした口腔機能の軽微な衰えを示していますが、筋肉や心身の活力低下(フレイル)の初期症状とも考えられ、老化の最初のサインでもあります。
食べるための機能が正常か確かめる方法として「パ」「タ」「カ」の発声で簡単にチェックすることができます。
食べ物を口から
こぼさない唇の働き
上あごにしっかりくっつく舌の働き(食べ物を押しつぶす・飲み込む)
誤嚥せずに食べ物を食道へと送る筋肉の働きがあるかどうか
この3つの言葉を連続して5秒間に何回発声できるかを調べます。1秒間あたり6回以上発声できれば健全です。
「滑舌」の低下を調べることにも有効な方法です。
健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間で、その期間が延びることで介護の必要のない生活を長く続けることができます。
口腔機能が衰えると、会話が減るだけでなく、食べる量の減少や栄養状態の悪化により筋肉もやせていき体力低下で外出も少なくなります。つまり、歯や口の働きは「社会とつながる」ための重要な役割を担っていることがわかります。
高齢者にとって「社会とのつながり」を失うことで、心身の活力の喪失から要介護が必要な生活に陥ってしまうこともあります。
高齢者にとって大切なことは、しっかりとした食生活を意識すること、仕事や趣味、ボランティアなどで楽しく会話をしたり体を動かすことで社会とのつながりを持つこと、そうしたことが健やかな「口腔機能」を維持することになり、また健康寿命を延ばすことにつながると考えられます。
長い人生をすこやかに生き抜くためには、「オーラルフレイル」への取り組みが必要です。
歯と口を
清潔に保つこと
口腔機能を
維持すること
オーラルフレイルへの対策として「セルフケア」でできることは大きく2つあります。
1つは常に口の中を清潔に保つこと、そしてもう1つは口腔機能、つまり歯と口の働きを維持・改善に努めることです。
歯を失うとオーラルフレイルになりやすくなります。歯を失う原因となる虫歯や歯周病から歯を守るには歯周プラーク(歯垢)を除去し、常に清潔に保つことが最も大切です。
適切なブラッシング(歯とハグキの間を磨く)とともに、「歯間ブラシ」などの活用がお勧めです。また「デンタルリンス(洗口液)」や「液体歯磨き」なども上手に使って、日々の清掃に楽しくバリエーションをつけて取り組みましょう。
※歯石の除去などはセルフケアだけでは対処することはできません。歯や口を清潔に保つためには、歯医者さんで定期的に清掃と検診を受けるようにしてください。
口腔機能を維持するための、噛む、飲み込む、発声する、笑うといった動作は、唇や舌、口周辺の多くの筋肉がスムーズに働く必要があります。「口と舌の体操」や「唾液腺マッサージ」などを行うことで筋肉や唾液腺がしっかり働く健やかな口腔環境を維持できます。
また本を声に出して読んだり、カラオケで元気に歌ったりすることも有効な口の体操になると考えられています。
「ア」の発音のようにゆっくり大きく口を開けます。
しっかり口を閉じて、口の両端に力を入れながら、舌を上あごに押し付けるようにして奥歯を噛みしめます。
口を大きく開けて、舌をできるだけ出します。
上唇を舌先で触ります。
左右の口角(こうかく)を舌先で触ります。
頬をふくらませて、舌を上あごに押し付けて、口から息が漏れないようにこらえます。
息を吸うように口をすぼめます。
※口輪筋は口の周りを取り囲んでいる筋肉で、口を開けたり閉じたりする時にはたらきます。
「ラ」は舌全体を上下にしっかり動かす発音です。「パ」「タ」「カ」に「ラ」を加え、
できるだけ大きな声で、はっきりと声を出すことで食べるための機能のトレーニングができます。
唾液腺をやさしく刺激することで、唾液がたくさん出るようになります。唾液がたくさん出ると食べ物が口の中でまとまり、飲み込みやすくなります。